死が二人を分かつまで
以前は土日に休養すればすぐに体力は回復したのに、最近では一向に疲れが取れなくなってきてしまっている。


一体自分はどうしてしまったのだろう……。


「おかあさん…」


強張った表情で考え込む小夜子を見て不安になったのか、さとしがギュッと抱き付いて来た。


ハッと我に返り、その瞳を覗き込めば、ウルウルと潤んでいる。


「ごめんごめん。おかあさんは大丈夫だよ」


小夜子はニッコリと微笑んだ。


ただ笑顔を作るだけでもかなりのエネルギーを必要としたが、さとしを安心させるためならばこれくらい何てことない、と自分を奮い立たせる。


「さとしがいるから……」


そう。

今はちょっと、疲れが蓄積し過ぎているだけ。


少しでも多く稼ごうと、残業をたくさん引き受けてしまったから。


体が慣れれば、また以前のような、パワフルでタフな自分に戻れるはず。


小夜子は自分に言い聞かせた。


「その名前を呼ぶから」


さとしのおでこと自分のおでこをくっつけて、小夜子は歌うように囁く。



「【さとし】はね、おかあさんが元気になれる、魔法の言葉なんだよ」
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