死が二人を分かつまで
「そうですね」


「君はどう思う?」


「私ですか?」


「ああ」


「彼が父親で、間違いないと思います」


彼は躊躇する事なく言い切った。


「そう…」


津田も、それ以外考えられなかった。


今まで集められて来た数々のピースが、その枠組みの中に、ピタリと納まるからだ。


ため息をつきながら、津田は書類を自分の鞄に仕舞った。


「調査内容は、くれぐれも内密に頼む」


「承知しております。ご安心下さい」


彼はそう答えつつ立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。


「女性が一人で生きて行くのは大変です」


窓辺へと移動し、ブラインドの隙間から夜の街を見下ろす。


「しかも小さな子どもを抱えて。20年前は、シングルマザーに対し、今よりも強い偏見があった筈です。きっと、大変なご苦労をされたことと思います」


彼は振り向いた。


「同じ女性として、彼女に敬意を表します」


窓辺に佇む、その優秀な探偵……。


【彼真由美】は、慈悲深い微笑みを浮かべながら、聡明な瞳で、津田を真っ直ぐに見つめていた。
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