死が二人を分かつまで
彼の事務所を出て、津田は自分の車に乗り込んだ。


とても疲労困憊していた。


別に落ち込むような内容ではない。


今まで正体不明だった父親が誰であるか分かったのだから、むしろ喜ばしい事である。


しかし、その事実を告げた時の相手の葛藤を思うと、津田は胸が痛くなった。


『俺が、それを言わなくちゃいけないのか…』


そう思ったあと、すぐに『いや』、と頭を振る。


だからこそ、告げなくてはいけない。


これ以上、二人の思いが育ってしまわないように。


何もかもが、手遅れになる前に。


その時ふと、津田の体に、何か嫌な感覚が電流のように走った。


思わずケータイを手に取り、さとしの番号を呼び出して発信。


しかし、すぐに留守番電話サービスに繋がってしまった。


津田は急いで車を発進させた。


さとしのアパートに到着し、部屋の前まで来ると、勢いよくチャイムを鳴らす。


しかし応答はなかった。


思わず興奮してドアを強く叩いたが、やはり誰も出てくる気配はなかった。


「クソ!」


津田は舌打ちをし、急いで車へと戻ると、アクセル全開で走り出した。
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