死が二人を分かつまで
そして、意を決したように言葉を発する。


『こいつは今までこんなにも優しい声を出した事があっただろうか?』


進藤はその場にそぐわない、そんな感想を抱いていた。


『いや。きっと、今までで一番残酷な言葉を言うために、俺を油断させているに違いない』


進藤はとっさに耳を両手で塞ごうとした。


しかし、それよりも早く、否、たとえ聴覚が捉らえられなくとも、魂まで響いたであろう言葉を、津田は吐き出した。



「さとしはお前の、息子なんだよ……」



その瞬間、進藤の足元が揺らいだ。


一瞬地震かと思ったがそうではなかった。

自分で自分の体重を支えられず、進藤はその場に膝を着いていた。


それでもさらに体が崩れ落ちそうになる。


『そうか、俺はこのまま、死ぬのかもしれない』


グルグルと回る床を眺めながら、進藤は考えた。


あんなに幸せな時間を過ごしてしまったから、その代償として、この命が奪われるのだろうと。


『それならそれでかまわない。いっそ、このまま楽になれたほうが…』


「うそだ」
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