死が二人を分かつまで
願いも虚しく、数時間後、進藤は当たり前のように目を覚ましてしまった。
固い床の上に投げ出していた体は強張り、節々が痛んだが、構わず起き上がる。
顔を洗うため、よろけながら洗面台に向かった。
朝起きてベッドを出た後、一番最初にやる事は顔を洗う事だから、進藤はその慣習通りに動いた。
鏡には、津田に殴られ、口元が青黒く腫れ上がる己の顔が映し出されていたが、進藤はまるでその事には気付いていないかのように、ただ機械的に水を手に受け顔を洗う、という動作を繰り返した。
『このあと俺は、一体何をすれば…』
タオルで水気を取りながら、ぼんやりと考える。
『あ、そうか。会社に行かなくちゃな。早く用意をしなければ』
あちこち痛む身体に鞭打ち身支度を整えると、進藤はアパートを出た。
少し肌寒いけれど、空は高く、空気も澄んで、とても心地よい10月の朝。
本来はそんな清々しい一日の始まりに心が浮き立つ筈なのに、進藤は太陽から降り注ぐ恵みの光を避けるように、足早に駅へと向かった。
いつもより30分遅い電車に揺られ、職場にたどり着いた時には、始業時間の数分前であった。