死が二人を分かつまで
慟哭
部屋を出て、さとしの後を付いて歩いて行くと、近くの公園が見えて来た。


案内などした事はないのに、彼がこの場所を知っていた事を意外に思ったが、すぐに答えが見つかった。


公園入口の狭いスペースに車が停められていて、その傍らに、タバコをくわえた津田が立っていたからだ。


『そういうことか……』


進藤は一人納得した。


『あの男が今、さとしを一人にする筈がない』


早く決着をつけさせようと考え、車で送って来たのだろう。


最初から自分が顔を出すと進藤が話し合いに応じないのではないかと予想し、この場所で待機していたのに違いない。


『分かってる。お前の判断は正しいよ……』


さとしは公園の敷地内に入って行った。


少し遅れて進藤も後に続く。


津田の横を通り過ぎる時、進藤は彼と視線を交わしたが、しかし、お互いに無言だった。


さとしがベンチに腰掛ける。

少し迷い、結局進藤はそのままさとしを見下ろす位置に立ち尽くした。


俯いた姿勢で、さとしは弱々しく言葉を発する。


「僕は……昨日の事は、忘れます。だから、進藤さんも、忘れて下さい…」


予想通りの言葉だった。


進藤は目を閉じ、震える声で応じる。
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