死が二人を分かつまで
どれくらいの時間、そうしていただろうか。


「ん…う……」


ふいに、さとしが苦しそうな声を漏らし、目を開けた。


「さとし!」

「しんどう…さん?」


「大丈夫か?体は痛くないか?」


「ここは……?」


さとしはぼんやりとした表情で視線をさ迷わせつつ呟いた。


起きぬけで、まだ頭が良く働いていないのだろう。


『だけど、無事、目を覚ました』


進藤はようやく安堵のため息を漏らした。


『良かった、さとし。本当に良かった……』


「お前は車にぶつかって、ここに運ばれて来たんだ」


言葉が出てこない進藤に代わって津田が説明する。


「右足を骨折してる。でも、単純骨折だから、リハビリすればすぐまた歩けるようになる。心配はいらない」


「あの……」


さとしは不思議そうな表情で、津田と進藤を交互に見た。


「何で、お二人が、一緒にいらっしゃるんですか?」


「え?」


「確か僕、路上ライブで津田さんにスカウトしてもらって、喫茶店でお話してる所でしたよね……」


その言葉に、進藤と津田は思わず顔を見合わせた。
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