死が二人を分かつまで
もちろん、個室となると費用がかかるが、交通事故なのだから治療費は加害者側の保険金で賄える筈である。


「いや……さとしが目を覚ますまではここに居る。お前こそ、帰って良いぞ」


「さとしの実家に電話した」


唐突な津田のその言葉に、進藤はビクッと体を震わせた。


「当然だろ?甥が交通事故に遭ったんだからな」


津田はあえて淡々とした口調で続ける。


「今、こっちに向かっている筈だ。二人が来るまで俺はここで待機していないとな」


「俺とさとしの関係を、言うのか…?」


進藤の声は震えた。


さとしの実の父親は……。


「そうだな」


津田は本人や親族に無断でプライベートな調査を行った。


真実を告げるとすれば、その辺の事を納得の行くように説明しなければならない。


正直気が重かった。


だからといってそんな重要な事柄を隠しておける筈もない。


もちろん、津田は二人が血の繋がりを知らないまま、想いを遂げてしまった事に関しては伏せるつもりでいた。


常識的に考えて、それをわざわざ広達に告げる必要性は無いと判断したのだ。


そのまま進藤と津田は無言になり、それぞれがそれぞれの思いに耽っていた。
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