死が二人を分かつまで
津田は携帯灰皿を持ったまま辺りをキョロキョロと見回す。


「…何が?」

「昔の想い出って、それでなくても美化されるからね。さとし君が初恋の人の息子だと分かった時の、あんたの目がさ~」

「いや、別に小夜子さんが初恋だったわけじゃないけど……。え?何が言いたいんだ?」


津田は進藤をギロリと睨んだ。


「さとし君に、小夜子さんの面影を重ねちゃったりしたんじゃないの?彼は男の子だからね、勘違いすんじゃないよ」


わずかなタイムラグの後、進藤の頭は沸騰しそうになった。


「ば、な、何言ってんだあんた!!」

「自分では気付かないんだよね、そういうこと」


津田は何かを見つけた様子でそちらに歩いて行く。


駐車場の隣、広場の入口付近には灰皿が設置してあり、彼はその中に携帯灰皿の中身を落とした。


「ともかくさ、彼はこれから売り出すウチの大切な商品なんだから、変なことに巻き込まないように気をつけてくれよな」


そう言いながら津田は、笑ったのか威嚇したのか判断に迷うような、奇妙な表情で振り向いたのだった。
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