藁半紙の原稿
いつまで使ってもらえるかはわからない。

不安になる程、惹かれる時間。
楽しいのだ。



霎介さんの話は、いつも知的で、精巧で、確信的だった。

難しくてわかりにくいような印象もあったが、理論は整理されていて、現実味は薄いが頭では理解しやすいその彼特有の語り口調は、私の耳に心地良かった。





そして時々見せる、斜に構えたような微笑み。

整ったその顔で、
涼しげなその瞳で、
目が合ってしまうと、私はどうにも内心の動揺を禁じ得なかった。



女性の扱いに慣れていそうな清太郎さんと話していてもこうも動悸を意識することはそうない。










顔に出ない質で、本当に良かったと、自分で思う。





























「あさまー」



玄関先から清太郎さんの声が聞こえる。
その声がいつもより固く感じられた理由は、後々わかる事になる。

霎介さんは湯呑みを置くと、そのまま机に向かってしまった。



こうなっては私が何を言っても無駄だろう。
私は二つの湯呑みと急須が乗った盆を持って玄関先に向かった。





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