藁半紙の原稿
私は、それを聞いて、別段憤慨したわけでも、彼を軽蔑したわけでもなかった。
たとい、彼が片想いへの疲れも手伝ってあんな行動に出たのだとしても。
「……しょうがないじゃないですか」
「………え?」
手元に目を落とす私の返答に、清太郎さんが驚いてこちらを見る気配があった。
「好きだって、想ってたって、苦しかったり、寂しかったり、するじゃあありませんか。
魔が差すことだって、たまにはあると思うんです」
「しかしだね栞さん……」
「私は良いんです。
正直なところ、あの事があったから、私も霎介さんもお互いの気持ちに気付くきっかけが持てたんだし……
むしろ、今清太郎さんが好きな方がいるって聞いて、今後もわだかまりなくお友達でいられそうだなって、ほっとしたくらいなんですから」
そう頑張って正直に言い切ると、清太郎さんは少しの間呆としてまん丸くした眼を私に向けていたけれど、やがて「ふ」と吹き出し、やがて大きな声で豪快に笑い声をあげた。
すぐ横にいた私に限らず、お店を覗いていた辺りの人や、店の主人まで驚いて清太郎さんと隣で固まった私を見た。
しかしそれも、すぐに皆興味をなくしたように各々の用事に戻って行った。
私だけが、清太郎さんの笑いが収まるのを待っていると、彼は「ひー…」と笑いすぎて出てきた涙を拭いながら、人参を三本取り上げた。
「栞さんはほんとにできた人だ」
「そんな…」
「可愛くて、聡明で、大した度量ですよ」
なんだかからかわれているような気分で、どう返したものかしら。