藁半紙の原稿
「に、してもだ。
太郎の奴一体全体、あんな量の人参何に使うのやら」

「なんでも新作のお菓子に野菜を取り入れてみたいんだそうですよ」




すぐに答えた私を傍らに立つ彼はじっと見て来る。

急に降りた沈黙の意味がわからないながらも、彼に見つめられて身体の芯が少し熱を持ち始めたのを感じた。

小首を傾げて見返すと、霎介さんはなんでもないような顔をして私の手をとった。




「っ!?」





人がいるのに…

霎介さんの手は握る、と言ったしっかりした手つきではなくごく淡いもので、私の右手の感触を楽しむかのように爪先を撫でてみたり、指の間を軽く通してみたりしてくる。


右手だけにされる行為は、なんだか奇妙で、変に身体の芯が疼いてきてしまう。

気が付けば、鼓動の音が随分速かった。








「あの…霎介さん?」

「綺麗な手だな」




それだけ言って少し上がった腕の部分をスルッと触れてくる。

それだけでばくんっと私の心臓が跳ねたのがわかった。



私の身体は、一体どうしてしまったのだろう。

熱を持って疼く自身を抱えながら人の中にいる事が随分いたたまれない。


少しでも熱を落ち着かせたくて、私の腕をはい回る霎介さんの骨張った手を握る。

と、直ぐさま彼は私の指と自身のとを密接に絡ませ、改めて握り返してきた。


触れ合う手の平が、溶けてしまうと、思った。
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