藁半紙の原稿
「いやー買った!
買ったなー!!」
意気揚々と前を行く清太郎さんは、お店で渡された野菜を入れる大きめの紙袋を抱えて鼻歌混じりに闊歩している。
霎介さんはと言えば、呆れた様子で清太郎さんを眺めながら私の横を歩いていた。
その手には買った食材を入れた買い物カゴ。
空けた片手では私の手を指同士を絡めるようにして握っている。
駄目だってわかってはいるのだ。
誰が見ているかもわからないような外で、こんな、こと。
でも、私からは離せなかった。
離せるわけ、ないのだ。
霎介さんの方はしれっとしたもので、清太郎さんも何も言わないで私達の一歩前を歩いている。
少し、ため息をついた。
「疲れたかい?」
横から、囁くようにして聞く彼に少し目を細めてねめつける。
頬が少し熱いから、効果はなさそうだったが。
「わかってるくせに」
「さて?何がかな?」
そうやってしらばっくれる。
そんな事を言うくせに…その綺麗な顔に浮かべる微笑みはとても優しいものだから、
もう、何も言えない。
苦し紛れに、私が唇を尖らせてそっぽを向くと、楽しそうにクックッ…と笑いながらつないでいた手を離して私の腰にまわし、引き寄せる。
「っっ!?」
びっくりする私などにはお構いなしで、清太郎さんにはとても聞こえないような声で、彼は鼻歌を歌い始めた。
小さい、低い声。
人気の大分減った黄昏の道を、私は二通りの歌声を聴きながら歩いた。


