アンダーホッパー
そして、ゆっくりと振り返ると、総理を睨んだ。

「何が言いたい?」

「いえ」

総理は、目線を床に向けた。

政治家は、総理の頭のてっぺんを軽く睨むと、

「たがが、10人。それも、旧型だ」

吐き捨てるように言った。

「その旧型が、数十年に渡り、存在している。そして、貴重な我々の兵士が、命を落としている」

「何が言いたい?」

「少子化故に」

総理は頭を下げながら、にやりと笑った。

「素材は、いるだろうが」

政治家の殺気を感じ、総理は頭を上げた。

「優秀な人材でなければ、やつらには勝てない。それは、あなた自身がご存知では」

「フン」

その言葉に、政治家は鼻を鳴らすと、歩き出した。

「若造が」

呟きながら吐き捨てると、政治家は総理の前から消えた。





「現在、日本の安全は、未曾有の危機に陥っています!それなのに、日本の防衛は、あまりにも脆い!」

ラジオやテレビから流れる声に、暗闇に潜む影が笑った。

「そうかな?」

「ガデム!」

暗闇が支配するビルの谷間に、銃声がこだました。

しかし、その数秒前に、銃を構えた外人の首が飛んでいた。

そして、ほぼ同時刻…。

日本海から入国しょうとした密入者が、惨殺されていた。

「全員は殺すなよ。貴重な材料になる」

闇の中、人に近い姿をした影の目が、輝いた。





そして、さらに同時刻。

闇の奥…町の片隅に、膝を抱えて隠れるように、眠るものがいた。

ボロを纏い、生気を感じられない姿でありながら、痩せほこっているようではなかった。

豊かな国では、ゴミ箱を漁れば…食べるものがあるからだろうか。

空の上で、輝く星は…皮肉なことに、闇の中にいるからこそ、美しい姿を見せていた。

しかし、闇で膝を抱えるものは、見上げることはなかった。
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