夏休みのTシャツ
「きっと勝てなかったんだよ。優希のミスがあっても、なくても。俺がミスしてたかもしれないし。あそこまで頑張ったじゃん。だって1本差だよ。」


「本当に?本当にそう思ってる?」


「本当だってば。優希は疑り深いなぁ。」


一度もこっちを向かないで、準備の手を動かし始めた恭ちゃんは、まるでこれ以上話しかけるな、と言っているようだった。


あたしはバカだと思う。

どうしてあんなことを聞いたんだろう。


恭ちゃんが精一杯ついたウソを、どうして素直に信じてあげられなかったんだろう。


お互いが何もしゃべらない。

沈黙に耐えきれず
「頑張ってね」
とだけ言ってあたしはその場を去った。



会場を歩き回る。
あてなんてないのに。


涙がこぼれそうで、自然と手を握ってしまう。



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