恋色カフェ
「ここに冷蔵庫があれば良かったんですけどね」
「キッチンの冷蔵庫の片隅を借りるからいいよ」
楽しそうな2人の声を遠くに聞きながら、私は釈然としない気持ちを持て余していた。
別に、感謝されたかった訳じゃない。
それでも、そこに卑しさが微塵も無かったかと言われれば、口をつぐんでしまう。
仕事に没頭しているふりをして、パソコンの画面をじっと見つめていると、万由さんが先に事務所を出て行くのが視界の片隅に映った。
どうしてこんな時に限って、一緒に出て行ってはくれなかったんだろう。
店長のオイルライターの音が、しんと静まり返った事務所に派手に響く。煙を吐き出す音までも、抗える訳も無く、耳に流れ込んでくる。