恋色カフェ


今は、店長の存在を、気配を、感じさせないで、お願い。


……って、私は一体誰にお願いしているんだろう。

心で呟いたことは、せいぜい神様くらいしか聞こえないのに。




「──3年前のこと」


突然、静寂を破るように言葉が落とされ、私は思わず顔を上げてしまった。


「思い出してた」


店長は煙草を口にしながら、私に気を遣ったのか窓を半分程開け、紫煙を外へと逃がす。


「前もこうやって時々、机にドリンク剤が置いてあったなって」


壁に凭れながら、店長はこちらを見て薄く笑みを浮かべている。その笑みの意味をどう捉えたらいいのかわからず、私は自然を装い、店長から視線を外した。


< 364 / 575 >

この作品をシェア

pagetop