恋色カフェ
「すんません、高宮さんに戸締まり押し付けたみたいになっちゃって」
「気にしないで。事務所片付けたら私もすぐ帰るから」
電車の時間が迫っていた勝沼君を笑顔で見送りながら、私は散らかしたままだった机の上を片付ける。
「結局、予定のところまで終わらなかったな……」
そう言ってため息をついた頃には、机の上もほぼ片付いていた。が、何となくすぐに帰る気持ちにはなれなくて。
私は、事務所の窓から夜の街を見下ろした。
事務所側の窓の外は道路に面していて、行き交う車のライトが暗闇に明るい光を落としている。
あのキスは、どういう意味、だったのだろうか
指が唇に触れると、蘇った感触──。
ドクン、と心臓が鳴ったのと同時に、バタン、と店の出入り口から音が聞こえてきて、身が縮んだ。