恋色カフェ
こんな気持ちになったことなんか、生まれてこれまで、一度たりとも無かった。縋りついても、どうしても側にいてほしい、と思ったことなんか。
それ程までに、彗の存在は勝沼の中で大きく膨らんでしまっていた。だから、尚更厄介で、自分でもどうしたらいいのかわからない。
……わからないが、自分の願いは叶わないということだけは、嫌という程わかった。
「──あ、良かった。リックー」
フロアからの扉が開き、さっき勝沼をからかっていたスタッフが手招きしている。
「高宮さんは?」
「……あー、事務所に」
「俺、2人がイチャイチャしてたらどうしようかと思って」
「するか」
「店長がデザートの残り、みんなで食えって。アイスコーヒーもおかわりあるってよ」
「……わかった」
勝沼は一瞬、事務所の方を振り返った。
「フ……」
──いつまでも、何やってんだろ。
勝沼は自嘲にも似た笑みを小さく零し、フロアへと戻った。