恋色カフェ
事務所には、車の往来する音だけが響く。
風が止まったのか、紫煙が夜空へと立ち上っていくのが見える。
――どうして、何も言わないの?
「店長には、これ以上誰かを傷つけてほしくなかった……」
「……高宮さんも、十分傷ついただろ」
「だからって、店長が万由さんを傷つけていい、なんてことはないです」
車の音に紛れて、そうだな、と聞こえたような気がする。
「離婚の為にだって、店長は女の子と遊んでいるふりをしていただけかもしれないけど……それでも、傷ついた人は少なからずいた筈です」
「…………理英に、会ったの?」
店長は勢いよく振り返り、驚いた顔をこちらに向けた。
「ゆうべ会いました。本当に偶然ですけど、店長と再会したあのカフェで」
店長は、そう、と零し、窓側には向き直らず、こちら側を向いたまま壁に凭れている。
「……あのカフェは、理英の今いるFM局に近いからね。高宮さんと会った日も、理英に用事があったんだ」