恋色カフェ
「っ、な……んで」
「クリームが勿体無くなって」
まだ至近距離にある彼の顔には、不敵な笑みが浮かんでいる。手首も掴まれたままだ。
心臓はドクドクと、激しく脈打つ。まるで、一気に酔いがまわったように。
「……彗」
「…………はい」
「さっき、店長って呼んだよね」
「、……」
「事務所を出た時も」
不敵な笑みの理由はこれだったか、と。
――――“お仕置き”
そう言われる前に逃げ出そうとは思ってみたものの、男の力で掴まれている手を容易に振りほどくことは出来ない。私は悔しくて、せめてもの抵抗にと、目を逸らしてみせる。
「よく考えたら、腹減ったよな」
まるで頭になかった言葉が耳を掠め、私は逸らした視線をまた、店長へと戻してしまった。
「夕方休憩の時、何か食べた?」
「……休憩室にあった、お菓子ぐらい」
「俺もキッチンに少しだけ様子見に行った時、味見した程度だな」
何なんだろう。もういつもの店長に戻っている。変化が目まぐるし過ぎて、まるでジェットコースターに乗っている気分だ。