恋色カフェ
店長の顔を見上げると、彼は、無理矢理自分の胸元に私の顔を押し付ける。
「そこ掘り下げなくていいから」
恥ずかしかったんだろうか。慌てた口調に、思わず笑ってしまった。
「あんまりからかうと、本気で傷つくぞ」
笑いを止めた私を、店長は首を傾げて覗き込む。柔らかく微笑んだかと思えば、キスを一つ。
「なーんてね」
冗談だよ、と続けて、店長は私の頭を撫でた。
「……思うんだけど、死ぬまでの間、人を傷つけたことが一度も無い人間なんていないんじゃないかな」
「……え?」
「さっきの話。たとえ、意図的に傷つけていなくとも、知らない間に傷つけていることだってあるし」
たくさん傷つけるようなことをしてきた俺が、こんなこと言えた義理じゃないんだけど、と店長は苦笑する。
「だから開き直れ、って言ってる訳じゃないよ。俺も、自分がしてきたことの重さは少なからずわかっているつもりだし。
でも、それを思い返してくよくよしていたって、何も変わらない。多分重要なのは、自分のしたことに向き合って、認めて、もう二度と同じ過ちは犯さないと心に決めることなんじゃないかな」