恋色カフェ
店長は寂しげに、薄く笑みを浮かべた。
「……本当に変わりましたよね、店長」
「そう?」
自分勝手なところは相変わらずだろ、と笑う。
「俺が良い方向に変わった部分があるとすれば、それは彗のおかげだよ」
店長は私の頭を優しく撫でると、マグカップを手にしてキッチンへと歩いて行ってしまった。
慌てて後姿に、洗いますよ、と声を掛けたが、店長はこちらに手のひらを見せて私を制した。
時計を見れば、もう準備をしなければいけない時間を指している。心では焦っているのに、私は何だかその場から動くことが出来なかった。
今の私は、店長に感謝される資格なんて、ない。
テーブルの上には、アンバーで使っているものと同じコースターが2つ残されている。触ると、まだほんのり温かい。
こんな小さな物でも、テーブルに熱を伝えない為に、頑張っている。
ちゃんと、役に立っている。
――――なのに、私は。
「思いやり、か……」
手にしたコースターに印刷されている『Amber』の文字を見つめ、私は自分自身に向けて、小さく頷いた。