恋色カフェ
「じゃ、また後程」
車から降りて店長に軽く頭を下げ、すぐにアパートへと向き直る。本当は店長の車が見えなくなるまで見送りたかったけど、出勤までそれ程時間が無いからやむを得ない。
……でもやっぱり。
名残惜しくて後ろを振り返ると、視界に入ったのは――――黒い、人影。
「……、」
背中に、冷たいものが走る。
その人影はフルフェイスのヘルメットを被り、バイクの脇でこちらを向いて佇んでいる。
恐らく間違いない。あれは昨日、後ろを走っていた――――……
「――彗!」
聞き覚えのある声が、大声で私を呼んだ。
その人物はヘルメットを脱ぎ、バイクのところに置くと、こちらへ歩いてくる。
――逃げた方がいい、今のうちに。
わかっている。わかっているのに。
足が……動かない。
「久しぶり」
目の前に現れた彼は、この間会った時よりもやつれた様子で、不気味な笑みを浮かべている。
「秀人……どうしてバイクなんか……」
「ああ……ちょっとね」