恋色カフェ
店長が淹れてくれたコーヒーは、やっぱり美味しかった。
キッチンをこっそり覗き見していたけど、特別なことをしているようには見えなかった。
勝沼君が悔しい、と言った気持ちがわかる。
一体、何が違うのだろう。
「思いやり……」
世の中には、一振りでコーヒーが美味しくなる魔法の粉なんていうものがある訳じゃない。やっぱり店長が言うように思いやりが大事、ということなんだろうか。
そんなことを考えていたら、ついそれを口に出してしまっていた。
視線を感じて店長の方を見れば、ニヤリと勝ち誇ったような笑みをこちらに向けている。
「わかった? 俺の思いやり」
「わからないけど……わかりました」
何それ、と言って店長は笑う。
「誠実に向き合っていると、コーヒー豆はちゃんと応えてくれるものなんだよ」
店長はコーヒーを飲み干すと、マグカップをテーブルに置いた。
「コーヒーと誠実に向き合うということは、その向こう側にいるお客様とも誠実に向き合うということ。
アンバーのコーヒーを飲んでホッとしたとか、嫌なことを忘れられたとか、来てくれたお客様の心を癒すことが少しでも出来たらいいな、って。
……それがせめてもの償いだと、勝手に思ってる。そんなことで俺のしたことが赦される訳でもないだろうけど」