恋色カフェ
よく見れば、お風呂にも入っていないのか、髪の毛もべたついている。
「それよりさ、彗は朝飯食ったの?」
「……うん」
コーヒーだけしか飲んでいないと正直に答えるのは、火の中に身を投じることと同じだ。
「……あー、さっきまで一緒にいた男と?」
黙っていると、秀人はニヤリと口角を上げた。
「俺、知ってるよ。昨日途中までつけてたんだけど、見失っちゃってさ。仕方ないから、今までここで彗を待ってたんだよ」
秀人はさらりとそう言って、可笑しそうに唇を歪ませる。
やっぱり、昨日のは……。
「付き合ってんの? あの男と」
「……」
「俺と別れて、そんなに経ってないよな?」
「……」
「彗がずっと好きだった奴って、あいつなんだろ」
「……え?」
どうしてそのことを秀人が知っているのだろう。私に好きな人がいたことは、あかねにしか話していない気がする。
あかねが喋ったのだろうか。いや、そんなことを彼女が秀人に喋る訳がない。そもそも忘れられない人がいることを隠しておけ、と言ったのはあかねだ。