恋色カフェ
「道連れになんかされたら、たまったもんじゃない」
握った手に力が込められる。ちょっと、痛い。でもその痛みが、震えた心にじんわりと沁みていく。
「……でも店長はどうして、彼が死ぬつもりだってわかったんですか」
秀人が発した台詞を冷静に考えれば、そんなのすぐにわかったことなのかもしれない――けど。
「……あいつ。昔、知り合いが最後に見せたのと同じ目をしていたんだ」
「……え」
「大学時代の知り合いが一人、自殺しててね。そいつに一番最後に会ったのが俺だったんだけど……その時は気づいてあげられなかったし、もし気づいたとしても何もしてやれなかった。
だからって訳じゃなかったけど、今ならその時よりも少しは出来ることがあったからさ」
店長は秀人の為だけじゃなく、もしかしたら私の為にも、彼に救いの手を差し伸べてくれたんじゃないだろうか。
「……ありがとう、ございます」
私の分でお礼を言うならきっと許されるだろう。迷惑を掛けたのに、今はそれしか言えない自分がふがいない。
店長は「俺が勝手にしたことだから」と小さく笑っている。
「……後はあいつ次第だけど」
そう言って大きく息をつくと、店長は薄く笑みを浮かべる。
「そんなに心配しなくても大丈夫だろ、きっと」
私は、そうですね、と返して、祈りを込めながら店長の手を握り返した。