記憶混濁*甘い痛み*

吸いつくようにつながれた指先を離さずに、あの場で抱きしめてくちづけたら…オレの友梨に戻ってくれたのか…?


でもキスをして…それで記憶が戻らなかったら?

抱きしめようとした手を、おもいきり振り解かれたら…?


オレの事を嫌悪し、その姿さえ見せてもらえなくなったら… ?


それが怖くて…怖くて


オレは戸惑い、彼女を逃がしてしまった。


彼女に触れなくなって半年以上……オレの心も身体も飢え、毎日をただ誤魔化しながら生きている。


キスをして抱きしめたら眠り姫は目を醒ますのではないか…なんて。


お伽話みたいに甘い希望だけを頼りに彼女との逢瀬を重ね時を待った。


けれどその時に自分を支配したのは

期待よりも恐怖。


オレは彼女に…拒絶されるのが恐いのだ。


その証拠に…拒否されただけで今日は病院へ向かう事も出来ない。


彼女から距離を置かれ、もう逢いたくないと告げられたら……一体オレはどうしたらイイ?


どうにもならない…全てが、彼女主体の恋なのだ。


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