祐雫の初恋

 祐雫は、少し早目に桜川駅へと向かい、

慶志朗は、祐雫が駅に到着したと同時に車で現れた。



 初めて祐雫と慶志朗が出逢って以来、二度目の夏が訪れていた。



「祐雫さん、お待たせしました。


 ようやく祐雫さんとゆっくり会える時間が取れました。


 ぼくのことを忘れてしまったのではありませんか」



 慶志朗は、何時もの掴みどころのない表情で、祐雫に笑いかける。

 そして、車から降りると、助手席の扉を開けて、祐雫に席を勧めた。



「嵩愿さま、お誘いくださいまして、ありがとうございます」



(忘れるなんてことはございません。

 お逢いできない分だけ、

 想いが募るばかりにございます)



 祐雫は、声には出せずに、こころの中で応える。




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