定義はいらない
「俺のこと好き?」

「分かりません。」

抱いている最中に聞くことではないと思う。


好きだから抱かれているのに

好きだからこんなに身体があなたを求めているのに。


「俺のこと好きになったら大変だよ。」


そう言ってキスをした。

太朗ちゃんは私の気持ちを知っている。

いつからか私の気持ちは表情に出ていたに違いない。

すぐに気持ちが顔に出るのだ。



太朗ちゃんを見ると自然にちょっと目が潤む。

瞳孔が開く。

少女マンガの様な瞳になっていたに違いない。

キラキラキラキラ。



「好き」とは言えない。

意地を張ってるわけじゃない。

意地なんて張っても意味がない。

「好き」と声に出したら

彼を失う。

それが恐かった。
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