定義はいらない
「あのさ、何か話したいことでもあるの?」

業を煮やして遥がある晩の電話で尋ねた。

ずっと聞きたかったに違いない。


「ない。」

「ふーん。じゃあいいけど。」


もっと突っ込んで聞いてくれたらいいのに。

そうしたら「仕方ないなぁ」って体で話せるのに。


「実は私…。」

「うん。」

「不倫しているの。」

「……あんた、泥棒じゃん。」



『泥棒』


その言葉が私を深く突き刺した。

私の心臓から血が流れる。

剣を伝って少しずつ血が失われるのを感じた。


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