定義はいらない
「泥棒じゃないよ。奪ってないし、奪う気もないし。」

「『不倫』って犯罪なんだよ。奥さんから夫を盗むっていう犯罪。」

「盗んでないってば。」

「バレたらあんたが慰謝料払うんだよ。」

「いくら?」

「期間にもよるらしい。半年で300万って聞いたことある。」

「じゃあ200万くらいかな。」

「そんなに?」


電話口でため息をつかれる。

これは遥の得意技。

いつだって、私のすることにため息をつくんだから。


「止めなよ。」


簡単に言ってくれる。

自分は結婚が決まっているから、簡単にそんなこと言えるんだ。


「相手がどんな奴だか知らないけど
 あんたはそんな男にはもったいない。」

「相手のこと知らないでしょ?」

「聞いてないからね。」

「言ってないもん。」


沈黙。

もう電話を切りたいと思った。
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