シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「フランク、すまない。少し、疲れた・・・」

フランクが近寄ると項垂れていた顔を上げ、苦しげに息を吐きながら呟く。

肩でする呼吸は荒く、額には汗も滲んでいた。

「王子様、少しどころではございません!」

「いや、ここで気力が、途切れてしまった・・・待て・・今、立つ」

ふらつく体を制御するように力を込め、立ち上がろうとするのを制し、フランクはサッと触診をした。


「王子様、随分ご無理をなさいましたね!?かなり消耗しております。さぁ、早く治療を。こちらへ―――」

ふらつく体に肩を貸し、ゆっくり立たせると、治療室に移動させた。


「生憎、ベッドが塞がっておりまして・・・。こちらで申し訳ありません」

申し訳なさそうに呟くと、ふかふかのクッションで埋めたひじ掛け付きの椅子に座らせた。


包帯はすでに血でぐっしょりと濡れ、もともと何色だったのかと、問い掛けたくなるほどの有り様だった。

「王子様、失礼いたします」

包帯を取って早速傷を診る。


ガラスで切ったというが、この切れ方はかなり酷い・・・。

王子様ならガラスが飛んで来たとしても、簡単に避けられるだろうに。

そうしなかったのは、何か庇う様なものが近くにあったということか・・・?


「王子様、何度も申し上げておりますように、もっとご自分を大切にしていただかないと。先ほどのことも、そうです。部下に任せてご自分は治療すべきでした。とにかく、今夜は仕事をしないで下さい。お早くお休みいただきます。いいですね!?」

眼鏡の奥を光らせ、治療の手を進めながら、有無を言わせぬよう言葉に力を込めた。


ぱっくりと開いた傷口を、フランクの器用な手が丁寧に縫い合わせていく。

アランに進言できるのは、城の中でも指折り数えるくらいの人しかいない。

その中でもフランクは、幼い頃から診ているため、事体に関しては、かなり強い力を持っている。


「そうも行かん・・・。明日までに報告書に目を通さねば・・」

目を閉じ、背もたれにぐったりと体を預け、苦しげに熱い息を漏らすアラン。

椅子の傍のポールには少し変わった色の薬瓶が吊られ、左腕に管を伸ばしている。


これはどう贔屓目に見ても仕事ができる状態ではない。


「王子様、点滴が終わるまで、暫くそのまま居てください。くれぐれも、動いてはいけませんぞ」

包帯を巻き終わり、傷の手当てを終えたフランクは、毛布をアランの体にかけた。


そうして医務室を出ると、執務室に居るパトリックの元に向かった。
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