シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
”しかし―――王子様はお怒りになるかもしれません。それでも宜しいのですか?”
一緒に行きたいと頼んだ時、フランクの言った言葉が木霊する。
目覚めたときに許可なく寝室にいることを、アランはきっと咎めるだろう。
何か罰を受けるかもしれない。でも、それでも何かしてあげたいこの気持ちは、怯むことがない。
エミリーは洗面所でタオルを濡らして、汗ばんでいる額を拭き始めた。
すべすべした肌・・・形の整った眉・・・長い睫毛・・サラサラの銀髪。
こんなにじっくりと見るのは初めて。生まれながらの王子様、自分とは住む世界の違う人。
本来なら関わることの出来ない人。
この瞼の中にある吸い込まれてしまいそうな深い青の瞳には、未だに慣れない。
見つめられると、なんだか恥ずかしくて居た堪れなくて、いつもその視界から逃がれたくなってしまう。
「まだ少し熱があるわ・・」
額に手を充てると、まだ熱い。
洗面所に向かうと、タオルを流水にさらしてなるべく冷やした。
故郷では熱が出ると、いつもこうして冷やしたタオルを、額に乗せてもらった。熱があるときはこれが一番気持ちいい。
額にそうっと乗せると、ひんやりとした感触に眉がピクッと震えた。
「起きちゃうかしら・・・」
白い腕をピタリと止め、不安そうに見た。
しかし、それはほんの一瞬のことで、再び静かな寝息をたて始めている。
何度か額のタオルを交換した頃、ウォルターがアランの昼食を持って寝室に来た。エミリーを見て驚いた顔をしていたが、無言でテーブルの上に置いていった。
部屋を出ていく背中を見送り、額の温まったタオルを取って、冷えたタオルを乗せた。
「・・・誰だ!?」
突然放たれる威厳を含んだ言葉。
同時にベッドの中から腕が素早く動き、白い腕を掴んで強く引いた。
その拍子、身体がベッドの上にうつ伏せで倒れ込み、起き上がろうともがいていると、くるりと仰向けにされた。
アランが体を起こしていて、いつの間にかベッドの上で組敷かれていた。
「あ・・・」
突然のことに、言葉が出てこない。
見下ろしている顔は最初の険しいものから見る間に変わり、今は、なんだか苦悶の表情を浮かべている。
両腕をベッドに縫い止めるようにされ、動こうにも、どうにも出来ない。
アメジストの瞳が不安げに見開かれる。
「全く、君は・・・」
フッと息を吐き、組み敷いた身体を優しく抱き起こすと、ベッドの上に落ちたタオルを拾った。
すると、今度はタオルを握り締めたまま動かなくなってしまった。
「・・・?アラン様・・・―――っ!?」
それは、とても素早くて、まったく避けることが出来なかった。
きつく抱き締められ、再びベッドに、今度はそっと倒された。
「私の寝室を訪ねるとは・・・覚悟は出来ているか?」
一緒に行きたいと頼んだ時、フランクの言った言葉が木霊する。
目覚めたときに許可なく寝室にいることを、アランはきっと咎めるだろう。
何か罰を受けるかもしれない。でも、それでも何かしてあげたいこの気持ちは、怯むことがない。
エミリーは洗面所でタオルを濡らして、汗ばんでいる額を拭き始めた。
すべすべした肌・・・形の整った眉・・・長い睫毛・・サラサラの銀髪。
こんなにじっくりと見るのは初めて。生まれながらの王子様、自分とは住む世界の違う人。
本来なら関わることの出来ない人。
この瞼の中にある吸い込まれてしまいそうな深い青の瞳には、未だに慣れない。
見つめられると、なんだか恥ずかしくて居た堪れなくて、いつもその視界から逃がれたくなってしまう。
「まだ少し熱があるわ・・」
額に手を充てると、まだ熱い。
洗面所に向かうと、タオルを流水にさらしてなるべく冷やした。
故郷では熱が出ると、いつもこうして冷やしたタオルを、額に乗せてもらった。熱があるときはこれが一番気持ちいい。
額にそうっと乗せると、ひんやりとした感触に眉がピクッと震えた。
「起きちゃうかしら・・・」
白い腕をピタリと止め、不安そうに見た。
しかし、それはほんの一瞬のことで、再び静かな寝息をたて始めている。
何度か額のタオルを交換した頃、ウォルターがアランの昼食を持って寝室に来た。エミリーを見て驚いた顔をしていたが、無言でテーブルの上に置いていった。
部屋を出ていく背中を見送り、額の温まったタオルを取って、冷えたタオルを乗せた。
「・・・誰だ!?」
突然放たれる威厳を含んだ言葉。
同時にベッドの中から腕が素早く動き、白い腕を掴んで強く引いた。
その拍子、身体がベッドの上にうつ伏せで倒れ込み、起き上がろうともがいていると、くるりと仰向けにされた。
アランが体を起こしていて、いつの間にかベッドの上で組敷かれていた。
「あ・・・」
突然のことに、言葉が出てこない。
見下ろしている顔は最初の険しいものから見る間に変わり、今は、なんだか苦悶の表情を浮かべている。
両腕をベッドに縫い止めるようにされ、動こうにも、どうにも出来ない。
アメジストの瞳が不安げに見開かれる。
「全く、君は・・・」
フッと息を吐き、組み敷いた身体を優しく抱き起こすと、ベッドの上に落ちたタオルを拾った。
すると、今度はタオルを握り締めたまま動かなくなってしまった。
「・・・?アラン様・・・―――っ!?」
それは、とても素早くて、まったく避けることが出来なかった。
きつく抱き締められ、再びベッドに、今度はそっと倒された。
「私の寝室を訪ねるとは・・・覚悟は出来ているか?」