シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
耳元でささやかれる言葉に、身体がピクッと震える。

叱られると思っていたのに、予想外の展開に身体が固まってしまう。

―――えっと・・・覚悟って・・・?

叱られる覚悟・・・城を追い出される覚悟・・・えっと、何の?

後頭部に差し入れられた手、もう片方の手はか細い手に絡めるように重ねられている。

怒るどころか・・・ベッドの上、見下ろしてくるブルーの瞳は何故だかとても優しい。

「手が冷たいな・・・」

大きな掌で、手を温めるように包み込む。

「身体もか・・・?」

腕が背中にまわされ、優しく身体を包み込む。

武骨な指が背中をスーッと辿る。

くすぐったいようなゾクッとするような妙な感覚に、身体が反応し、謀らずも震えてしまう。

ベッドの上、逞しい腕に抱きすくめられ、胸の奥がジンと痺れて、動くことも声を出すこともできない。

されるがままに身を任せてしまう。

「やはり少し冷たいな。心配するな・・・何もしない。君は、このまま少し眠ると良い。私も眠るから」

隣に体を沈め、布団をすっぽり被せ、そのまま抱き寄せるアラン。

”眠ると良い”って言われても・・・こんな状態じゃドキドキしてしまって、眠れないし眠くない。

こんな時落ちついて眠る方法があるなら、誰か教えて欲しい。

あたふたと考えを巡らせていると、後頭部に手が回り、逞しい胸元に押しつけられた。

アランの鼓動が耳に届いてくる。トクントクンと規則的に刻まれるリズム。

聞いているうちに次第に心が落ち着いてきた。

いつの間にか聞こえてくるアランの静かな寝息。

―――わたしを抱き締めていても、何も感じずに眠れるのね。やっぱり、わたしのことは妹みたいなもの?

寂しいような残念なような、複雑な気持ちを感じながら、重くなっていく瞼に負け、瞳を閉じた。

耳に届く鼓動を子守唄に、意識は遠退いてゆき、やがて深い眠りに落ちた・・・


「眠ったか・・・」自分の腕の中で眠るエミリーを愛しそうに見つめるアラン。

君がここに居て眠れるわけがない。

この愛らしい唇を奪い、全てを自分のものにしてしまいたい誘惑に、今も負けそうになる。

眠らせることによって、なんとか自制心を保つことが出来たが。

王子である私が、こんなに気を遣ってしまうのは、エミリー、君だけだ。


このままここで眠らせても良いが、目覚めた時に再び自分を抑える自信は、ない。

アランは服を着替え、身支度を整えると、ベッドのシーツで身体を包み、抱き上げて寝室を出た。

エミリーの部屋の前で控えていた護衛に扉を開けさせ、起こさないように、そうっとベッドに下ろした。


「いつの間にか眠っていた。疲れているだろうから、暫く起こさぬように」

護衛に申し置くと、アランは執務室に向かった。
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