シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
レオナルド?どこかで聞いたことがあるわ。

えっと、どこだったかしら・・・。

“ルーベンの王子様が来られるそうです・・・確か、レオナルド様と・・・”

そういえばメイが言ってたわ。もしかして、この方がルーベンの王子様?

うそでしょう?どうしてこの方が、あのときシルヴァの屋敷にいたの?

どうしてわたしを捕まえてるの??


不思議そうに見つめていると、レオナルドは深いグリーンの瞳をきらりと光らせてニコリと微笑んだ。

そのあと、困ったような表情になってぼそぼそと呟いた。


「参ったな―――ちょっと話をしようしたら、こうだ。・・・これはまた爺に叱られるな・・・」


シーンと静まった空気の中、ウォルターの静かな鋭い声が響いた。


「どうしてあなた様がその様なことをなさるのですか!?」


「さぁ、どうしてかな?私も分からん。“体が勝手に動いた”と言ったほうがいいだろう。彼女を借りていく。すぐに返すから心配するな。おい、そこの兵士、道を開けろ」


周りを囲む兵士を睨み、エミリーの身体をグィッと引き寄せ、ゆっくりと歩き始めた。



「レオナルド様、その方を何処に連れて行かれるおつもりですか!?いくらあなた様といえど、私は、強硬な手段を取らざるをえません!」


「ウォルター、分かっているだろう?君では私を捕えることは無理だ」


「それはどうでしょうか。私もあれから随分成長しておりますから」


鋭い瞳がレオナルドを睨み、ジリジリと近付いていく。

レオナルドの威厳が辺りに広がっていく。

何人かの兵士が膝をついてその場に崩れ落ちた。



「あの、レオナルドさん。多分、もうすぐアラン様がここに来ます。あの、だから手を放していただいた方が・・・その、アラン様があなたを・・・」


あのときパトリックさんに放たれた素早い攻撃。

苦しそうな表情・・・またあんな場面は見たくない。



「君は・・・今の、この私の傍にいても、平気なのか?」


「えっ?」



不思議そうに見下ろしているレオナルドのグリーンの瞳。

何か言いたげに口を開いたが、急に横を見やり、悔しそうに顔を顰めた。

身体を包んでいた腕の力がどんどん弱くなっていく。

グリーンの瞳が向ける視線の先には、ブルーの瞳に威厳を滾らせたアランの姿。

その斜め後ろから白髪の男性が歩いてきた。



「レオ。その手を放せ」


「レオ様、またそのような騒ぎを・・・」


「アラン、爺まで・・・・分かったよ―――皆騒がせた。冗談だ」
< 293 / 458 >

この作品をシェア

pagetop