シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「リードさん、ありがとうございました。もう戻りましょうか」

小鳥の飛んでいった方をじっと見上げているリードに声をかけると、バツの悪そうな顔をしてパッと横を向いた。


「別に、見とれていた訳ではありませんから、勘違いしないで下さい。さぁ、行きますよ」


ぶっきらぼうに呟くように言うと、さっさと門に向かって行く。

エミリーたちが森から出ると、門が再び軋む音を立ててバタンと、これまた重い音を立てて閉められた。

先頭にリード、少し後ろをエミリー、その後ろをシリウスとラウルが鋭い瞳を配りながら歩いていた。


王の塔の前まで来た時、後方から人影が目の前に走って来た――と思ったら、さっと抱き抱えられて護衛たちから離され、ストンと下におろされた。

護衛たちは気配なく近付かれ、あっけなく連れ去られたことに焦りながら身構えた。


「何をする!?そのお方が御正女様と知ってのことか!?」

「何者だ!そのお方を離せ!」



「全く、あなたの周りにはいつも厳つい男たちがいるな」


「あ・・・あなたは、あのときの―――」



緑がかった黒髪にグリーンの瞳。

あのとき、シルヴァのお屋敷で会った方。



“また、お会いしましょう”



どうしてあなたがここにいるの?



「御正女?あなたはもうアランの正室になったのか?」


「ぇっ・・・?いぇ、正室には・・・まだ・・あの、あなたは誰ですか?」




「君達。彼女を少しの間借りるだけさ。そんな恐い顔するな・・・よ―――っと」

シリウスとラウルの攻撃をするりとかわし、それぞれの後頭部に一撃をくわえた。

二人の体が膝から崩れ落ちていく。



「やめてください。シリウスさん、ラウルさん大丈夫――?」


「――おっと、あなたには大人しくしてもらうよ」


どんなに抵抗しても、がっしりと抱き寄せられていて、全く動くことが出来ない。

うめき声をあげて顔を顰めて蹲る二人の護衛。


「あっけないな・・・。さぁ、一緒に来ていただこうか」



「嫌です!離して下さい!!」



城の庭、王の塔の前で、凛と響くメゾソプラノの声。


男の眉がすっと寄せられ、グリーンの瞳が揺らぎ、腕の力が僅かに緩んだ。


「くっ・・・これか―――」




「エミリー様!どうかなされましたか!?」


エミリーの声を聞きつけ、警備兵たちが周りに集まって来た。

皆息を飲み、男を攻撃するタイミングをはかっている。

ジリジリと包囲を狭めていく兵士たち。



「何事だ!?」


ウォルターが人垣を割って入り、エミリーを抱え込んでいる人物を見て、驚きの声を挙げた。


「レオナルド様―――」
< 292 / 458 >

この作品をシェア

pagetop