シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
御令息の一人が勇気を出してアランの傍に駆け寄り、丁寧に頭を下げて挨拶をした。

「アラン様、本日はこのようなパーティにお招き頂き、光栄に御座います。私はカロン家のレナードと申します」


「カロン家のご子息か。先の嵐の事後処理の協力、まことに感謝致す。あちらの地区は被害が酷かった。苦労をかける。君の屋敷も少からず被害を受けたそうだが、今はどんな様子だ?」


「有り難う存じます。我が屋敷は修復を完了し、今は以前と変わらぬ生活をしております」


「そうか。良かった。あちらの地区の被害には心を砕いておる。事後処理はまだ続くが、これからも協力を願う」


「お言葉有難う御座います。これからもカロン家は復旧に勤める次第です」



レナードがアランと言葉を交わしているのを見て、他の御令息たちも続々と周りに集まりだした。

皆の目当てはもちろん、隣に立つ可憐で美しい女性。

皆、アランの元に駆け寄っては来るが、視線は女性に熱く注がれている。

アランの眉が不機嫌そうに寄せられていく。

レナードが皆の気持ちを代表して言った。



「アラン様、そこのお美しいお連れ様を御紹介頂けませんか?」


「―――彼女は、エミリー・モーガンと申す。異国から参った。エミリー、皆に御挨拶を」


「皆さま、お初にお目にかかります。異国から参りました。この国のことは、色々勉強させていただいてます。宜しくお願い致します」


ニコリと微笑み、膝を折って挨拶をすると、待ち構えていたように、御令息たちからダンスの誘いの手が次々と差し出された。

その手を見て、戸惑うエミリー。



「待て!待て、君たち。この私を差し置いて、その方をダンスに誘うことは許さないよ」


御令息たちの背後から、快活なレオナルドの声が響いてきた。

ずんずんと真ん中に割って入ると、エミリーをじっと見つめた。



「彼女と最初に踊るのは、この私だ。エミリー様、一曲お相手願い申し上げる」


丁寧に頭を下げたあと、レオナルドが手を差し出した。

すると、御令息たちの手が引っ込められていった。



「エミリー様、お手をどうぞ」


グリーンの瞳がきらきらと輝き、優しく見下ろしている。



――どうしよう。わたし、ダンスなんて初めてで・・・。

うまく踊れないかもしれないわ。

足をふんでしまうかもしれないし・・・お断りしてもいいのかしら。



不安げにアランを見上げると、レオナルドを鋭い瞳で見据えている。



「レオ、手を引いて貰おうか。彼女と最初に踊るのは、私だ」
< 298 / 458 >

この作品をシェア

pagetop