シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
こんなところであんなキスされたら・・・わたし、恥ずかしくてどうにかなってしまうわ。

どうしよう・・・本気かしら。


耳元で囁かれ、ドキドキするエミリー。

今までとは違うドキドキに、余計な緊張を生んでいた雑念がすっかりとれてしまった。


「・・・冗談だ」


アランを見上げると悪戯っこい瞳をして見下ろしている。


「もう・・・アラン様ったら、酷いわ」


ホッと息をついて軽く睨んだ。

アランは変わらずに優しい瞳で見下ろしている。

こんな風に冗談ぽい事を言うのは、全部エミリーのため。

そのおかげか、身体の力が抜け、脚が軽やかに動き始めた。


その、今までとは違うエミリーの動きに、会場中が息を飲んだ。


嫌な笑いを浮かべていた御令嬢たちが唖然とした表情に変わり、ついには羨望の眼差しへと変わっていった。

アランのリードに身体がしなやかに動き、ステップを踏むたびにドレスの裾につけられた宝石がキラキラと輝く。

楽しげに踊る身体は、羽が生えたように軽く優雅に動く。

エミリーのほんわりとした清楚なオーラも加わり、会場にいる人々をどんどん魅了していく。


二人のダンスを見ていると、あまりにも楽しそうで、ワクワクと湧きたつ衝動を抑えられなくなる。

一緒に踊りたくて堪らなくなり、手を取りあった者たちが次々に会場に進み出て踊りだした。

一気に場が華やいでいき、曲が終わったときには拍手が巻き起こった。



ダンスの終わりの挨拶をし終わるのを待てずに、走り寄ってきた御令息たちから次々とエミリーに誘いの手が差し出された。

戸惑いながらどうしようかと迷っていると、横からスッと手が差し出された。



「待った。次は、私のお相手を―――アラン、良いだろう?」


「仕方あるまい・・・レオ、一曲だけだぞ」


明らかに不快そうに眉を寄せながらも、一国の王子の誘いを断らせることもできず、エミリーの背中をそっと押した。


レオナルドの手を取って会場に躍り出たエミリー。


ターンをするたびに、キラキラと輝くように見える姿はとても美しい。

レオナルドが親しげに話しかけている。

エミリーも楽しそうに笑顔で受け答えている。


レオナルドの手が、必要以上に身体を触っているように見えるのは、私の嫉妬心からか・・・。




「アラン様、お久しぶりで御座います」


振り返ると、マリア姫が微笑みを湛えて、熱い視線を投げていた。
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