シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「マリア姫、昼間は御挨拶も出来ず大変失礼した」


「いいのです。お忙しいのでしょう。ところで・・・私をダンスに誘っては頂けませんの?お連れ様はあのようにレオ王子と踊られてますし・・・私たちも・・・ね?アラン様」


「・・・お願い申す」


渋々ながらと言ってはマリア姫に失礼だが、営業用の顔を作って手を差し出した。満足そうにその手を取るマリア姫。


「アラン様、彼女はどういう方ですの?」


「彼女は異国から参った者だ。私の塔に住んでおる・・・マリア姫、先回訪問した際、途中で帰国し大変失礼した。その代わりと言っては申し訳ないが、我が国にゆるりと滞在なさると良い」


「まあ、それは月祭りが終わっても、滞在しても良いと言うことですの?」


「お心のままになさるが良い。これは父君の意向である」


曲が終わり、終わりの挨拶を交わすと、アランの周りに御令嬢が集まってきた。

アランは、実はパトリックと同じくらい女性に人気がある。

普段はとても近寄りがたくて声もかけられないが、エミリーをエスコートする様を見て、“あの方があんな風にされているのなら、私たちも”と思ったようだ。


それに加え・・・

“これを機会に何とか王子様にお近づきになれ”

“顔を覚えて貰え” 

“ダンスにお誘いしろ”

“正室が無理でもご側女に”

等々、家の者にいろいろ発破を掛けられてきたのだろう。

皆緊張しながらも、とびきりの微笑みをアランに向けている。



「王子様。一曲お相手お願いします」


膝を折って挨拶する御令嬢たち。

ぐるりと囲んだ御令嬢を一瞥し、ダンスの相手が終わったはずのマリア姫が冷たく言い放った。


「あなた達、アラン様はもう一曲私と踊るのよ。お下がりなさい。そうですわね、アラン様?先程は途中からでしたもの・・・今度は是非最初から・・・ね?」



女の色香をねっとりと絡ませながらアランを見上げるマリア姫。

マリアに追い払われ、御令嬢たちは不満そうな顔をしながら散っていった。



熱のこもった瞳をアランに向けるマリア姫。

前回ラステアに来られた時は失敗したけど、今度こそ。


今度こそアラン様のお心に入り込まなければ・・・。


私の魅力を分からせて差し上げるわ。


まずは、あの方を離して、自分に向かせなければ。


マリアはダンスをしながら必死に考えた。
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