シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
アランがマリア姫とダンスをしている時、エミリーはレオナルドにずっと捕まっていた。

ダンスが一旦終わり、御令息たちから手が伸ばされていたのを、すっぱりと下ろさせたレオナルド。

ダンスをしながら、これ以上にない甘い微笑みをエミリーに向けていた。

その表情は、以前から知っていたかのような親しみも込められている。


「エミリー、私は、あの屋敷で一目見たときから、あなたに心を奪われている」

レオナルドの手がエミリーの手を強く握り締めた。

腰に当てられている手も徐々に力がこもっていく。


「レオナルドさん・・・あの、そういえば。どうしてあの屋敷にいたのですか?」


「それは―――ここでは話すことが出来ない。ただこれだけは言える。私はあなたに会いにあの屋敷に潜入したんだ」




あの屋敷は一見警備が厳重そうに見えたが、統率が甘く、レオナルドにとっては潜入するのは至極簡単なことだった。

あの日は潜入したばかりで、エミリーを探して屋敷内をウロウロしていたところをバトラーに声をかけられた。

部屋の中に入ったらあなたが居て、想像以上の美しさと、急に降ってわいた好機に胸が躍ったよ。

建物の仕組みを見て、これならいけると思い攫おうとしたが、間が悪いことに彼が帰ってきてしまった。

また逢える日が来ることを信じて“またお会いしましょう”と言葉を残して去った。

あの日からずっとあなたを想わない日は無い。



「あなたはアランの妃になるのだろう?だが、私はいつでもあなたを奪うつもりでいる。必ず私に惚れさせてみせるよ」


ふんわりとしたブロンドの髪に、レオナルドの唇が何度も落とされた。


「そうだ、一緒に来てくれ。外で少し話をしよう。私が何故あそこに居たのかも教えてあげよう」


「え?レオナルドさん・・・でも、あの・・・あの・・・」



――どうしよう。この方、とても強引でなんだか恐い。アラン様・・・。


振り返って会場の中を探すと、アランは綺麗な女性とダンスをしていた。


とても助けは望めそうもない。


昼間の様子だと、この方は警備兵も簡単に組み伏せてしまいそう。



「あ、あの・・・レオナルドさん、待ってください」


か細い腕を掴まれ、腰を引き寄せられ、有無も何もなく会場の外に向かっていく。


「おっと、昼間のような声は上げないでくれよ?この会場の楽しい雰囲気を壊したくはないだろう?さぁ、行こう」


「待ってください。わたしアラン様に、傍を離れてはいけないと言われていて――」



「待て!レオナルド殿。彼女を連れて何処に行かれる?」
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