シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「パトリックさん、今日はシンディさんは?来ていないみたいですけど」

「シンディは、祭りに備えて神殿で禊をしているよ。パーティーに来られなくて随分膨れていたな」


「禊・・・そうなんですか・・・会いたかったのに、残念だわ」


――シンディさんに会えたら、あの事を聞いてみようと思っていたけれど・・・。



「曲が終わったな・・・アラン、これくらいは許してくれよ・・・」



名残惜しげに身体を離してそう呟くと、パトリックは指先に甘いキスをした。

それを見て、御令嬢たちのグループからざわめきが起こった。

顔を寄せ合いヒソヒソと会話を交わしている。



「あの、パトリックさん、皆が見ています・・・」


「あぁ、構わないさ」



――構わないって言っても・・・。

あそこにいる御令嬢たちの視線が熱いわ。




「すまない。また困らせてしまったね・・・。さぁ、アランのところに連れていくよ」



「失礼―――パトリック殿。その方を御紹介頂けませんの?」


パトリックに連れられて、アランのところに向かおうとすると、不意に背後から声をかけられた。

振り返ってみると、さっきまでレオナルドと談笑していた女性が微笑んで立っていた。


赤みがかったブラウンの髪に、ブラウンの瞳。

背が高くて豊満な胸を持つスタイルは、女の色香をたっぷりと放っていた。

胸の大きく開いた煉瓦色のドレスがとてもよく似合っている。


パトリックににっこりと妖艶に微笑む女性。


「――っと、そうだな。だが、私が紹介しても良いのか?」


「アラン様はあの通り、お忙しいご様子ですもの。全く差支えないと思いますわ」


アランの方を見やると、ラステアとルーベンの大臣たちに囲まれて何やら話し込んでいる。

パトリックは暫く迷っていたが、マリアに向き直った。



「彼女はエミリー・モーガン。異国から来られた方だ。エミリー、この方はラステアの姫君、マリア様だ」


「お初にお目にかかります。マリア・フィールと申します」


ニッコリと微笑み、マリアは丁寧に膝を折った。



―――綺麗な方・・・。この方がラステアの姫君。


大臣方がアラン様のお妃にと推した方。



生まれながらの高貴な方―――



「エミリー・モーガンと申します。宜しくお願い致します」


「エミリーさん、私、あなたとゆっくりお話がしたいわ。あちらに参りませんこと?――良いでしょう?パトリック殿」



マリアは会場の隅にあるソファを指差した。
< 304 / 458 >

この作品をシェア

pagetop