シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
マリア姫はアランに熱い視線を送った。


あんなに心配そうに、この方を見ている。


そんなにこの方が好きなの?


この私のどこが、この方に劣っていると言うの?




エミリーを見もせずにマリア姫は呟くように言った。


「私・・・あなたに相談したいことがあるの・・・」


「わたしに相談、ですか?」



――こんなに高貴なお方がわたしに相談って、何かしら・・・。


マリア姫は、思いきったように、ばっと振り向いてエミリーを見つめると、すがるような声を出した。



「お願い。ここにいる他の方はみんな、アラン様を狙ってる方ばかりだから、とても言えないわ。あなたなら、身分も違うし、アラン様の妃の候補にもなれないわ。それに、この国の方じゃないから、口が漏れることもないわ。だから、私の話を聞いて欲しいの」


ワインをグイッと飲みほしたせいか、マリア姫の表情が艶っぽくなっていく。

使用人が、飲み物が乗ったトレイを持ってまわってきた。

エミリーはシャンパンを飲み干して、使用人のトレイに返した。



「こんなわたしでよければ・・・。どうぞ、お話しください」


プライドの高いマリアは、唇を噛みしめながらも心を決め、自らの想いをエミリーに語り始めた。



「私、アラン様をとても愛しているの。ずっと想ってきたわ。アラン様があなたに出会う前からずっと。ここだけの話、正式ではないけど、アラン様と結婚の約束もしたのよ」


――大臣の方が推したとは聞いたけれど、アラン様は実際にマリア姫と約束していたの?それはいつのことなの?もしかして、前にラステアに訪問した時?



「だから私は、ずっとそのつもりでいたわ。ギディオンのことも学んだし、アラン様の妃になるべく努力を沢山したわ。それなのに、アラン様は何故か私を拒んだの。約束を破棄して欲しいと言ってきたわ。私、悲しくて切なくて・・・」


マリア姫は涙をぽろぽろと流した。

つやつやとした頬に幾筋も流れる涙。

エミリーはポケットからハンカチを取り出して渡した。



「だから私、あなたが現れたせいだと。あなたに心を奪われたせいだと思ったの。だからあんなことを聞いたの。今の今まで、あなたに嫉妬していたわ。醜い心であなたに接してしまってごめんなさい。知らず知らずのうちに失礼な態度を取っていないかしら?」


「失礼だなんて・・・そんなことありません」


マリア姫は溢れる涙を拭って、真剣な眼差しでエミリーを見つめた。


「お願い、私に協力してほしいの。こんなこと、あなたにしか頼めないわ」


「協力ですか?でもわたしにはそんな力はないし、きっと、ご期待に添えることは出来ないです」



「あなたなら出来るわ。いいえ、これは、あなたにしか出来ないわ。とても簡単なことよ―――私を、アラン様の塔の中に入れて欲しいの―――」
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