シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「そうですわ。本当に、教えて下さらないかしら。どうやってパトリック様のお心を手に入れられたの・・・?どのようにしたら・・・?先程のダンスの後の、パトリック様のキス・・・あの方があんな姿を見せるなんて、私――――」


悔しげにハンカチを握りしめてエミリーを睨む御令嬢。

さっきまで泣いていたのか、とても目が赤い。

どんどん歪んでいく表情は、再び涙を零しそうになるのを必死で堪えているように見える。


「そんな・・・取り入るだなんて・・わたし、そんなことしていません」

「そうですわ。この方の言う通り、何もしていないと思うわ・・・聞くところによると、この方は身寄りが無くて、天涯孤独な身の上だとか・・・・。やはりそういった哀しい身の上ですもの。上手くお情けを頂けたのではありませんの?」


「そうですわ。パトリック様はお優しいもの。その優しさに付け込まれたのね?なんてお方なの!?」


ハンカチを握りしめていた御令嬢が声を荒げて言うと、エミリーをキッと睨んだ。


「天涯孤独だなんて、本当ですの?そんなことは、私たちには真似できませんわ。やはりこの方でないと・・・」


わざとらしく驚き、御令嬢の一人が大げさに首を横に振った。

他の御令嬢も口々に「まぁ・・・身寄りがないの?」とか「そうなんですの?それでお情けを・・・それならば納得がいきますわ」とか眉を寄せてぶつぶつ言っている。


そのうちの一人が冷やかな口調で言った。


「エミリー様、勘違いなさらない方が宜しいわ。お情けは愛情と似ていますもの。そのうち愛情ではないと気付かれたアラン様に、塔から出されてしまいますわ」


「そうそう、そうなる前に、早く御自分から出られた方が宜しいわ。その方が傷付かなくて済みますもの」


「アラン様のお隣には、やはりマリア姫のような、高貴でお美しい方がお似合いですわ」


「そうよ、だから、あなた様はなるべく早く塔を出ることをお考えになって。そうしないと本来の妃となられる方が、アラン様とお近づきになれませんもの」


「この国の未来のため、アラン様のため、身分の低いあなた様は、お早く身を引かれた方が宜しいわ」


「どうなのかしら、そのおつもりはあるのかしら?・・・黙っていてはわかりませんわ」



矢継ぎ早に発せられる御令嬢たちの言葉。


身分の良い御令嬢たちが微笑みながら発する上品な嫌み。

ぐるっと囲まれて逃げようにも逃げられない。



言い方は酷いけれど、御令嬢たちの言うことはもっともな気がした。


エミリーは返す言葉もなく、ただ俯いて耐えるしかなかった。
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