シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
傍から見れば、エミリーを中心にして御令嬢たちと和やかに談笑しているように見える。

その様子を、会場の隅から静かに見つめるブラウンの瞳。

御令嬢たちとエミリーの会話がとても気になる様子で、たまにエミリーの表情を窺うように見ている。

御令息たちが話しかけてきても上の空で、無言のままじっと見ている。

エミリーが沈んだ様子で俯いたままなのを見てとると、少し離れた場所で、貴族方と話をしているアランの方をチラッと見た。

アランはエミリーの様子に気づかないようで、ワインを飲みながらずっと話している。

ブラウンの瞳がスゥっと細まり、真っ赤な唇が満足げに歪められた。

が、次の瞬間その唇が悔しげに結ばれた。

マニキュアを塗った美しい指が、キュッと空を掴んだ。

アランがエミリーの様子に気付いたのか、御令嬢たちと談笑しているところに近付いていく。




エミリーが黙ったまま俯いていると、飲み物の乗ったトレイが御令嬢たちの間から、ヌッと割って入ってきた。

驚きながらも持っていた空のグラスを返し、新しいグラスを取って口に運ぶ御令嬢たち。

たったそれだけのことなのに、その所作は優雅でとても美しい。


生まれながらの品って、やっぱりこういうものなのよね・・・。

わたしにはきっと出来ていないわ。



シャンパンのグラスが、トレイの上でエミリーに取られるのをずっと待っていた。

使用人の瞳もシャンパンを取るのを促すように、ずっとエミリーを見ている。


「あ・・・すみません、もういいわ。ありがとう」


「・・・兎に角、あなた様は早く塔を出られるように、お心をお決めになってね。では、御機嫌よう」

「エミリー様楽しかったわ」

「またお会いしましょう」

「御機嫌よう」


御令嬢の一人が目配せをすると、皆頷き合い、大きな声で口々に挨拶をした。

皆丁寧に膝を折ってにこやかに微笑みながら、会場の隅に散っていく。


御令嬢たちが立ち去るのと同時にアランが来て、気遣うように肩を包み込んだ。


「エミリー、どうした?顔色が優れぬ・・・。疲れたか?もうパーティも終盤だ。そろそろ部屋に戻るか?」

「いぇ、大丈夫です。国王様が御挨拶なさるまで居ます」


「いや、初めてのパーティゆえ気疲れも多い。君はもう戻った方が良い。暫しここで待っておれ。良いか、一人で何処にも行くでないぞ?」


アランは使用人のトレイにワイングラスを返し、国王のところに向かった。

二言三言話をすると挨拶もそこそこな様子で、足早に戻ってきた。

腰に当てられた掌がとてもあたたかい。



「失礼致します。王子様、お連れ様を御紹介頂けませんか?」
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