シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「君は心配せずとも良い。どの道、もうパーティは終わる時刻だ。今頃父君が終わりの御挨拶を申し上げておる。ご覧、知らせを聞いて客人の馬車が出立の準備をしておる」
政務塔前の広場に帰りの馬車が並び、御者が馬の様子を確認したり、車輪の様子を確認したりしていた。
城門の方角を見ると、迎えの馬車の列が遥か向こうまでずらっと並んでいるのが見えた。
「先程のことは、もう気にしてはならぬ。君は私の主だ。身分など関係なく、王子の私よりも尊い存在である。自信を持って振る舞うが良い」
――でも、アラン様。それはお気持ちの上だけで、貴族の方たちはそうは思わないわ。
きっとこれからも、公式の場に出るたびにあんな風にいろいろ言われて、その度にアラン様は、こうしてわたしを庇うことになるわ。
傍にいる限り、ずっとずっとそれが続いて、余計な負担をかけてしまう。
御令嬢の方々が言う通りに、お傍を離れた方がいいみたい・・・。
分かってたことじゃない。
儚い夢だって、分かってたことじゃない。
駄目・・・泣いたら駄目・・アラン様に気付かれてしまうわ。
涙を溜め込んだ瞳を、気づかれないようにそっと拭った。
幸いアランは他のことに気をとられている様子で、気付いていないようだった。
貴賓館の方から、客人たちのざわめきが聞こえ始めた。
どうやら国王様のご挨拶が終わったらしい。
御令嬢たちの華やいだ話し声やご令息の愉快そうな話し声。
お酒も入り、良い感じに酔いがまわった紳士たちが上機嫌で馬車に乗り込み、帰路につく。
反対に、もう少しパーティーの余韻を楽しみたい者達が、馬車を待たせて庭でたむろしていた。
その中でパトリックは、御令嬢たちのグループに再び捕まっていた。
あのハンカチを握りしめていた御令嬢もいる。
「ねぇ、パトリック様。最近、街に出られてないそうですわね?どうしてですの?」
ねっとりとした甘い声と目線で、パトリックにしなだれかかる御令嬢。
「どなたか特定の方がいらっしゃるのですか?」
「いや、単に仕事が忙しいだけさ。君達が思っているようなことは、何もないよ」
「ねぇ、パトリック様?私、まだ帰らなくても良いんです。これから一緒に夜の城下を楽しみませんこと?」
「すまない。これから片付けなければならない仕事があってね。さぁ、もう遅い。君たちは早く帰られたほうがいい。ほら君も――」
言いながら、御令嬢たちの背中を柔らかく押した。
「まぁそんな・・・」「こんな時間までお仕事ですの?」などと口々に言いながら、名残惜しげに馬車まで歩く背中を見送り、軽くため息を吐いて空を見上げた。
空には、今夜も綺麗な月が輝いている。
政務塔前の広場に帰りの馬車が並び、御者が馬の様子を確認したり、車輪の様子を確認したりしていた。
城門の方角を見ると、迎えの馬車の列が遥か向こうまでずらっと並んでいるのが見えた。
「先程のことは、もう気にしてはならぬ。君は私の主だ。身分など関係なく、王子の私よりも尊い存在である。自信を持って振る舞うが良い」
――でも、アラン様。それはお気持ちの上だけで、貴族の方たちはそうは思わないわ。
きっとこれからも、公式の場に出るたびにあんな風にいろいろ言われて、その度にアラン様は、こうしてわたしを庇うことになるわ。
傍にいる限り、ずっとずっとそれが続いて、余計な負担をかけてしまう。
御令嬢の方々が言う通りに、お傍を離れた方がいいみたい・・・。
分かってたことじゃない。
儚い夢だって、分かってたことじゃない。
駄目・・・泣いたら駄目・・アラン様に気付かれてしまうわ。
涙を溜め込んだ瞳を、気づかれないようにそっと拭った。
幸いアランは他のことに気をとられている様子で、気付いていないようだった。
貴賓館の方から、客人たちのざわめきが聞こえ始めた。
どうやら国王様のご挨拶が終わったらしい。
御令嬢たちの華やいだ話し声やご令息の愉快そうな話し声。
お酒も入り、良い感じに酔いがまわった紳士たちが上機嫌で馬車に乗り込み、帰路につく。
反対に、もう少しパーティーの余韻を楽しみたい者達が、馬車を待たせて庭でたむろしていた。
その中でパトリックは、御令嬢たちのグループに再び捕まっていた。
あのハンカチを握りしめていた御令嬢もいる。
「ねぇ、パトリック様。最近、街に出られてないそうですわね?どうしてですの?」
ねっとりとした甘い声と目線で、パトリックにしなだれかかる御令嬢。
「どなたか特定の方がいらっしゃるのですか?」
「いや、単に仕事が忙しいだけさ。君達が思っているようなことは、何もないよ」
「ねぇ、パトリック様?私、まだ帰らなくても良いんです。これから一緒に夜の城下を楽しみませんこと?」
「すまない。これから片付けなければならない仕事があってね。さぁ、もう遅い。君たちは早く帰られたほうがいい。ほら君も――」
言いながら、御令嬢たちの背中を柔らかく押した。
「まぁそんな・・・」「こんな時間までお仕事ですの?」などと口々に言いながら、名残惜しげに馬車まで歩く背中を見送り、軽くため息を吐いて空を見上げた。
空には、今夜も綺麗な月が輝いている。