シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
塔の玄関先で、何故か急に立ち止まってしまったアラン。

ゆっくり歩いてたお陰で転びそうにはならなかったが、塔の前で止まったことに驚いた。


いつもは、何が何でも部屋に行くことを優先するのに、どうしたのかしら・・・。

顔を除き込むようにして見上げると、二の腕をつかまれてくるっと身体の向きを変えられた。

ブルーの瞳が月明かりにキラキラと煌いている。

でも、向けられている表情はとても真剣なもので、少し恐い。


何か怒っているのかしら?


「あ、アラン様、どうかしたのですか?」


「君は、レオを・・・レオナルド知っておったのか?確かに彼は強引な男だが、何の意味もなく君を連れ去ろうとはせぬ。本日数えるに2度もだ。彼が君に向ける感情は、私と同じものを感じた。彼のあの様子は、君に今日初めて会ったようにはどうにも見えぬ」


「あの――」


――えっと・・・どうしよう。あのことを言ってもいいのかしら。

今日レオナルドさんは“ここでは話せない”って意味ありげに微笑んでたわ。

あの場所で話せないことって何かしら。



“一緒に来て頂こうか”



あのときも、今日も、わたしをどこかに連れていこうとしてた。

ただ話したいだけのようなことを言ってたけれど。

とても強引で、とても不思議で、とても怖い方。

アラン様にはウソはつけない。



「―――あの方とは・・レオナルドさんとは・・・シルヴァのお屋敷で、お会いしました」

「シルヴァの屋敷?彼がそこに居たのか?」

「あの・・・はい・・・」


「エミリー此方に参れ」


玄関にいる警備兵の耳の届かないところまで移動して、アランはエミリーの肩に手を置いた。


「決して悪いようにはせぬ。どのように彼に会ったのか、詳しく申せ」


真剣な声とあたたかい手の感触。迷っていた心が落ち着いていく。

あの日シルヴァの屋敷で起こったことを詳しく話し始めた。

話しているうちにアランの瞳が曇っていった。


「彼が―――そうか、わかった」


そう言ったきり、アランは一言も話さなくなった。

ずっと何か考え込んでいるようで、さっきから口元に手を当てている。

腰を包み込んだ手が、時々ぎゅっと握られる。

そのたびに身体が強く引かれて、とても歩きづらい。

堪らずにアランの背中に手を伸ばして服をキュッと掴んだ。

するとますます強く引き寄せられて、とうとう抱き締められてしまった。

武骨な指が顎に添えられ、くいっと上を向かされた。


ブルーの瞳がどんどん迫ってくる。


え?と思った時には、すでに唇が重ねられていた。
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