シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
ベッドの脇で跪いて手を握ったリンクの瞳には、涙が溢れ、今にも零れそうに揺らめいていた。

シェラザードは辛そうに微笑み、溢れ出た雫をそっと指で拭った。


「泣かないで・・・リンク様。私、あなたに会えて良かった・・・束の間にも、あなたと一緒に生きられて、私はとても幸せでした・・・この国に来て良かった・・・あなたに、会えて良かった」

「シェラザード、もう喋るでない。今一度、今一度ヴェルタの白魔術を施す。待っておれ。気をしっかり持て。良いな!?」


リンクはか細い手首から丁寧にリングを外し、忌々しげにベッドの脇に置いた。その途端、シェラザードの身体が僅かに光り輝く。

だが、体中を犯した毒にはもう太刀打ちできない。


リンクは上を見上げ、見えざる者に向かって叫んだ。




「神よ!聞こえるか!?・・・罪を犯した私を許し、シェラザードに、今一度お力を―――!」


「リンク様・・・もう良いのです・・・この身体はもう治りません。私がいなくても・・あなたならきっと大丈夫。お願い・・・この先もずっと、この国の民を、私の愛しい者たちを守って・・・どうか、お願い」


悲しみに染まるリンク王の頬を、シェラザードは震える手でそっと撫でた。

リンク王はその上に自分の手を愛しげに重ね、か細い指にキスをした。

ブルーの瞳が悲しみに曇りシェラザードを見つめ、美しいブロンドの髪を撫でた。


「分かった。分かったからもう喋るな」



「愛しいあなた・・・・・私はいつでもあなたを見ています・・・空を・・・空を見て・・・私は・・・月になって、あなたを――――」




「逝くな!シェラザード!!シェラザード!」



シェラザードの瞳は固く閉じられ、もう二度と開かれることは無かった。

シェラザードの身体を包み、リンクは悲しみにくれたまま、暫く動くことは無かった。



“・・・リー”


エミリーは、目の前で繰り広げられた、あまりにも悲しい光景に息を飲み、声も出せなかった。

掌で自分の頬を包み、溢れてくる涙を拭った。


――これって、リンク王とシェラザードの・・・。

あれは作り話ではなかったの?

今見たものは現実に起きたことなの?どうしてわたし、これを見ているの?




“・・・・・・き・くれ”





――アラン様の声が聞こえる。わたし帰らなくちゃ。



アラン様が、呼んでる。




「エミリー、目を開けてくれ・・・エミリー」



気が付くと、アランの掌が頬をペシペシと優しく叩いていた。

目を開けると、アランのブルーの瞳が不安げに見つめていた。



――アラン様の瞳、さっきのリンク王によく似てる。



「アラン様、わたし今―――」
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