シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「エミリー、本日は客人の接待があるゆえ私は一日留守にする。マリア姫とレオナルドに国の中を案内致す。城にはウォルターを残すゆえ、何かあればまずウォルターに申せ。それから、あまり外を出歩くでないぞ。良いな?」


「あ・・・アラン様、庭のお散歩は良いでしょう?」


「・・・ウォルターに申してから行くが良い。月祭りの会場づくりもしておる。いろんな者が出入りするゆえ、気をつけて欲しい」


朝食が終わった後、アランはこう言うと、いつものように額にキスをして食堂を出ていった。


エミリーは食後のコーヒーをゆっくり味わった後、ご馳走さまをして食堂を後にした。

廊下に出ると、いつものようにシリウスが待っていた。


「エミリー様、本日はもう医務室に参る用事は御座いません。どうしてそちらに行かれるのですか?」


政務塔に向かおうとするエミリーに鋭い声で呼びかけた。


「フランクさんに用事があるの」


昨日あんな遅くに来てもらったのに、お礼を言いそびれてしまったわ。

でも、今日はまだ来ていないかもしれないわね。


そんなことを考えながら、政務塔への渡り廊下を歩いていると、外に3階の警備兵と2階の警備兵、それに料理長が歩いている姿が見えた。

みんな作業着のようなものを来て、政務塔の玄関に向かっているようだった。



「あれは・・・もしかして」


エミリーは急いで玄関まで走って行ったが、既に皆の姿はなく、ウォルターが外から書類のようなものを持って入ってきた。


「ウォルターさん、今、外に料理長さんたちが・・・何処に行かれたのか知っていますか?」


「彼らは、今からリックの手伝いにシャクジの森に参ります。エミリー様、本日はアラン様が居られぬ上に、会場作りの職人がたくさんここに出入り致します。なるべくなら塔を出ないようにお願い致します」


「それは無理だわ。ウォルターさん、料理長さんたちは罰を受けてるのでしょう?あの罰は、わたしも受けなければいけないの。だから、わたし、今から森に行くわ」



「お待ち下さい!エミリー様!シリウス、止めろ!」


サッと駈け出した身体を掴もうとする手が空を切った。

シリウスも止めようと前に立ちはだかるが、それをすり抜けて駆けて行ってしまう。

ウォルターもエミリーに追いつき、二人して前に立ちはだかった。



「お願い・・・わたしの気が済まないの。行かせて」


「駄目です。お戻り下さい」



「どうしたんだい?エミリー。ウォルター、朝から何を騒いでいる」
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