シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
“エミリー駄目だ。どんな事情があろうと、森に行くことは許可できないよ”


あのあと、パトリックにきっぱりと言われ、長官室に連れていかれた。


“君は目が離せないからね。アランが留守の間に、何かあっては彼に恨まれてしまう。すまないが暫くここにいて貰うよ”


そう言われて、昼頃までずっと長官室にいて、パトリックの仕事をする様子を見ていた。

おかげで、普段のパトリックからは想像もできないような、厳しい顔を見ることが出来たし、部下を想いやる姿も見ることが出来た。

ランチを食べ、いつものように講義を受けた後、エミリーはウォルターとシリウスに見張られながら、夕暮れの庭を散策していた。



夕日に影が長く伸び、花壇の中に人影が3つ出来ていた。

そこにもう一つ、忍び寄るように入ってきた影が一つ。

ウォルターの鋭い声が庭の中に響き渡る、シリウスも咄嗟に身構えていた。



「レオナルド様、お待ち下さい!」


「おっと、今日は攫いはしない。私も学んだからね。彼女とここで話すだけだ。
それなら良いだろう?」


警戒している二人を宥めるように、両手をあげてぷらぷらと振った。

ウォルターは納得いかないような表情をしていたが、すぐに警戒を解いた。

が、シリウスの方は、何かあればいつでも動けるように、準備をしていた。



「レオナルドさん、今日はアラン様と一緒に出かけられたのではないのですか?」


「やっと、会えたな・・・やはり、随分警備が厳重だな。まぁ、無理もないか・・・」



誰の耳にも届かないような小さな声で、ぶつぶつと呟きながらレオナルドはエミリーに近づいた。




「今日出かけなかったのは、簡単な理由だ。私は気を利かせたのさ。二人にしてやろうと思ってね」


レオナルドは近くのベンチにハンカチを広げ、エミリーに座る様に薦めた。

金糸の刺繍の施されたその上に、遠慮がちに座ると、レオナルドは軽く頭を下げて隣に座った。



「昨夜邪魔が入っただろう?おかげで話しそびれてしまった。私が話そうとしていることは、あなたが知っておかなければいけないことだ」


「あなたは何を知ってるのですか?わたしが知っておかなければならないことって、何ですか?」



レオナルドは空を見上げた。

夕焼け空に巣に帰る鳥の群れが優雅に羽を動かして飛んでいく。



「もしかしたら、あなたは既に知ってるかもしれないな・・・」
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